【春節はここに行け！】その5 翔んで生物島【何にもないけどいいところ】

　広州中心部から南西に約20㎞ほど離れた場所にある生物島（広州国際生物島）と聞いてピンときた方はなかなかの広州マニアである。というのも、スマホのオンライン地図でピンポイントでエリアを探せるこの時代、1.83㎢という小さな島面積のなかで、この島の名前を知るきっかけはなかなか見つからない。

　英語名は文字通りGuangzhou　International　Biotech　Island（略してGIBI）。この名前だけ見ると、ゲーム『バイオハザード』のアンブレラ社じゃないけど何かをよく分からない生物研究しているトップシークレットだらけの怪しげな島と彷彿させるが、実際中国華南のトップクラスの生物製薬研究機関が置かれており、またプリンスホテルの進出が決まっており、島1周をランニングできるマラソンコースも用意しているなど、今後の発展が見込める島である。　今回、無名な島のディープなポイント掘り下げてみた。

広州国際生物島大体図

■中国医学薬学の先端基地

　周囲は黄埔区と海珠区と大学城があり四方を川で囲まれた生物島。広州市は1999年、何もない中洲だった官洲島を国際性的生物技術研究産業基地として決定。00年には広州国際生物島と命名した。06年、07年には広州市の国家生物産業基地となり、08年には重大な戦略的プラットフォームである珠江デルタ地域発展計画紀要を付与され、16年には「国家級科技企業孵化器」の称号を獲得した。

バス停近くにある広州国際生物島の看板

　同島は、世界級生物産業の基地として、広州イノベーションの模範エリアであり、ヨーロッパや北米地域、香港マカオなどの多くの企業と提携し、スマート医療、インターネット産業、デジタル政府、スマートシティなどに取り組んできている。

　現在同島内には約280にも及ぶ医学生物研究開発関連とサービス業関連の企業が進出しており、コロナワクチン開発でも有名なイギリスのアストラゼネカ（中国名は阿斯利康）の華南本部も現在進出中である。また検査機関の「金域検験」が置かれ、PCR検査のサンプルも検査していた。島自体は広州市政府が直接管理しているため、この島への企業進出基準は他地域と比べ厳しい

水墨園からアストラゼネカを眺める

　同島には昼間に約2000人の人がこの島で働いており、ほとんどは医学生物関連とサービス業である。そのうち、サービス業では、アパートとホテルの進出が見込まれ、ほとんどの関係者が住むといわれる生物島国際公寓や20年11月に開業したばかりの48階建てのアスコットグループのサマセットがあり、さらに現在建設中のプリンスホテルも数年後にはオープンする予定だ。

2つ並ぶ高層ビルのうち、手前がサマセットでそばには地下鉄官洲駅がある

　島内の再開発中も進んでおり、わずか1.83㎢という狭い面積のなかでも今後の発展に期待が持てる。

■マラソンコースがある観光島

　同島には島1周できるようにマラソンやサイクリングができるようにコースを舗装している。島北側の水墨園にスタート地点があり、スタートと6.6㎞と書かれているコースがある。気候が涼しくなりまた12月に広州マラソン開催が迫る11月から2月にかけての早朝、大会練習や健康のためにジョギングする人たちが多く訪れるため、マラソンサークルの間では結構有名。

ジョギングコースのスタート地点

サマセット47階から見た生物島の開発状況

　50m置きに距離が書かれているコースの途中には木陰やきれいな花壇が植えられているほか、片方は水路がずっと続くため、ときおり浮かぶ小舟や飛来する水鳥が自然の雰囲気を出している。また、水墨園、叠翠園、南山公園、陳氏大宗祠といった観光スポットもあるため、秋から冬にかけて散策しがいがある。

サマセットの様子

　島内にはバス353路の1ルートが運行しているほか、百度アポロが開発した自動運転タクシーのステーションもあるが、こちらはまだ1台も見かけていないので今後というところか。また、島内を走る自動車の台数も少ないので、自動車の運転練習にやってくる人もいる。意外だが隠れた観光島なのであった。

左上がプリンスホテルとなる予定の建物。右下は353路のバス停

　ちなみに同島辺のアクセスは3ルートしかない。ひとつは、地下鉄4号線に乗って官洲駅下車する方法。2つ目は自動車で倉頭か大学城からの地下トンネルを通って同島に入る方法。3つ目は島南西の手前まで公共バス（友和近くの燕塘企業駅から252路で70分程度、小洲路東駅下車）で来て橋を渡る方法である。ちなみに、同島の所属は黄埔区だが、臨時宿泊証明書の発行は海珠区となっているので、このよく分からない行政区分も怪しさを示唆するひとつである。

水墨園

島の内部。右上は無人タクシーのステーション

　将来は地下鉄12号線も官洲駅に停車する（潯峰崗〜棠渓〜恒福路〜建設六馬路〜二沙島〜赤崗〜官洲〜大学城南の37㎞区間で23年開業予定）ため、白雲区や越秀区からのアクセスも便利になる。

広州国際生物島完成予定図だと完成後の未来は明るい！？

■この島に住む日本人に聞きました

　多くの日本人が住む天河区から公共交通機関を乗り継ぎ約1時間ほどかかるこの島になんと10名に満たないが日本人が住んでいるという話を聞きつけた。この島に住んでいる日本の方は、海珠区や番禺区にある会社に出勤している。このうち、生物島居住歴3カ月の日本人太太のZさんに、ここでの暮らしぶりを聞いてみた。

Q1

この島を選んだ理由を教えて下さい

元々住んでいたアパートの契約更新時期となったためです。

Q2

いつごろこの島に引っ越してきたのですか？

昨年11月です。

Q3

この島に来たときの第1印象を教えてください。

住んでいるところはきれいなマンションで眺めが良いけど買い物できる場所がなさそうというイメージでした。

地下鉄官洲駅ですぐそばにサマセットが建つ

Q4

実際3カ月ほど住んだ感想は？

そこまで変わらないです。

Q5

食事や買い物はどうされていますか？

朝はアパートで洋食と中国料理のビュッフェの提供があります。島内にレストランは数軒ありまあすがまだ行ったことはなく、島内の会社勤めの方がよく利用しています。アパート1階にマクドナルドがありますが準備中のスターバックスは未だに開店していません。

買い物は主に珠江新城のAEONまで出かけます。島内のスーパーはローカル過ぎて、日本人の欲しい物は、ほとんど置いてないません。地下鉄の隣駅の八勝圍駅と繋がっている保利広場地下には「7FRESH」がありますが、残念ながら品数はAEONには及びません。

盒馬も使えますが、品揃えの関係か買える商品が少ないです。料理店のワイマイは頼んだことはありませんが、頼んでいる方を見かけたことはあります。

Q6

こちらに移り住んでお友だちとお会いできたりしていますか？？

友だちと会うのは天河区の方ですね。こっち側は特に行きたいと思える場所がないのが残念です。

生物島国際公寓

Q7

週末は何をされていますか？

島に引っ越してから週末は夫と買い物に出かけたりします。専業主婦なので、平日に1人で島内の散歩もしますが島外に散歩に行くことが多いです。アパートの北側に水墨園があり、島を一周できるランニングコースもあります。景色も良いので運動したい方にはおすすめです。

Q8

島内から外には出やすいですか？

地下鉄の官洲駅がアパート出入口から徒歩30秒という立地なので、島の外には出やすいですね。日中は駅を利用する人はほとんどいないので、ストレスがないです。近所を走るバスは島内を一周するのみで、島の外に出るには車か地下鉄しかありません。

Q9

かかりつけの病院まではタクシーで移動ですか？

タクシーですね。

Q10

現在のお住まいの部屋に満足していますか？

非常に満足しています。なにより車の往来やクラクション、工事の音などといった騒音がなく、穏やかで静かな環境で過ごせます。新築なので清潔感があり、蚊などの虫もまだみていません。排水口も臭くなく。ほとんどストレスなく家の中で過ごせます。

Q11

現在のお住まいの設備に満足していますか？

満足していますし、2月10日より2階のジムが利用できるようになりました。スパもミストサウナや普通のサウナ、ちょっとしたプールもあるなど設備も整っています。

Q12

これから生物島に来られる日本人に対しなにか一言お願いします

買い物するのには不便ですが、家の中で過ごす時間が多い主婦にとって環境は良いです。ジムやシアタールーム、キッズルームもあります（まだ利用したことはないです）。今はマンション1階にマクドナルドがあるほかに22時には閉まってしまうセブンイレブンもあります。スターバックスも準備中なので、いつの日か開店すると思います。また今後、近くにショッピングモールも建設される予定と聞いていますので、興味があればまずは散歩がてら島に訪れてみてはいかがでしょうか？